合唱祭も滞りなく続き、とうとう次はわたしたちの
クラスになった。
周りにたくさん人がいるとはいえ、
なんだかだんだん緊張してくる。
わたしだってこうなんだから、ピアノを弾くあの子は
もっと緊張してるんだろう。
と、目をやると。
柔らかな目で開いた生徒手帳を眺め……出番の声がかかると、
ほほ笑んでそれを閉じた。
合唱は、なかなかだった。
特に悪いところもなく、ピアノもよかったし、
普段どおりにできたと思う。
それはさておいて、舞台袖にひっこむとわたしは
友達にかけよった。
「ねえねえ、始まる前にさ、なんか見てたよね?」
「え?」
すこし驚いて、軽くはにかむ顔にちょっと嬉しくも、
ちょっとさびしくもなる親……友ごころ。
「だれの写真?」
訊ねると、
「え?」
きょとんと笑いながら手帳を出した。その中身は、
「こねこ……?」
「お隣の。かわいいでしょ?」
罪のない笑顔でにこにこ笑った。
「そりゃ、かわいいけどさ……」
なんだか力が抜けて、わたしはやれやれと肩をすくめた。