今日の三者面談もようやく終わりを向かえ、
最後の一組が入ってくる。
でも入ってきたいつもの顔は、
生命の輝きや知性の光も映しはせず、
親と一緒のきまずさでもなく、ただ暗くよどんでいた。
「先生、この子どうです?」
母親が訊ね、答えようとする間にも、
「だめでしょう? 家でもそうなんです」
それだけを言いたいようにつないだ。
「なにがだめなんです?」
訊ねるとぱっと目を輝かせ、
待ってましたとばかりにあげつらう。
「毎日どこで遊んで来るんだか遅くに帰ってくるし、
帰ってきてもごろごろするだけで何もしないし、
家の手伝いすらしません。
何もやる気がないみたいだし、
宿題が出てるはずなのにやってるところなんて
見たことないんですよ。この子、だめなんでしょう、先生?」
「そんなことないですよ。
毎日放課後まで残って宿題や勉強をやってるようですし、
授業も掃除も委員会も、ひたむきに取り組む、
明るくていい子ですよ。
ですので、ご家庭でいい教育を受けられたんだと
思っていましたけど」
わたしが言うと、
「とんでもない!」
驚きというよりも……憎しみのような表情でその子をにらんだ。
「家じゃ何にもやらないくせに。
おとうさんと一緒でそとづらだけはいいね、この猫かぶり」
「やめてください!」
母親の言葉に縮こまるだけの姿を見て、思わず口にしていた。
「あなたのその目が
どれだけこどもを傷つけるのかわからないんですか?
やらなければやらないで文句を言われ、
やったらやったでけなされる、
それでだれがやろうという気になります?
おかあさんがだめな子として彼女を縛るから、
そう演じるしかないんでしょう。
なんでこの子の本当の姿を見ようとしないんですか!
こんなによく気がつくし、誇れるほど優しい子なのに!」
教師として振舞わなければいけなかったのに。
わたしはこぼす涙も隠すことなく、一人の人間として叫んでいた。