相談すると悩みが消えると有名な老女の元に、
一人の女の子が訪れた。
制服をきちんと着、おとなしくおちついた容貌のその子は、
学校で自分の身に起きていることを話し、
こみあげる感情を押さえきれずに涙した。
老女はやわらかくうなづきながら話を促し、
そして少女が話し終えると、言った。
「あなたは、何をしに来たの?」
少女はとまどう様子を見せ、それでも口にする。
「このままなのは嫌なんです。
もしわたしが変わって何かが変わるなら、
わたしはその方法を知りたいんです」
老女は悲しげな瞳で首を振ると、言った。
「ねえ、バカは死ななきゃ治らないって言葉、知ってる?」
「わたし……やっぱり、死ぬべきなんですか」
「とんでもない」
彼女は言い、
「あなたは何も変わる必要なんてない。
真に変わるべき、そして真に病んでいるのは、
周りにさんざん毒をまきちらしながら自分は一切気にしない、
彼らなのだから」
そして目を見て、言った。
「これから一週間。それを過ぎてもなにもかわらないなら、
またいらっしゃい」
少女は期待が裏切られたことにうなだれながら帰途に着いた。
だがそれから一週間後、またやってきた少女の顔は
晴れやかだった。
「どうだったの?」
老女が訊ねると、
「あの人たちがいなくなったんです。
教室の雰囲気もよくなりました」
少女は本来のものであろう笑みをあふれさせながら答える。
「そう、よかった。
周りが変わるだけで悩みがなくなることってあるものね」
老女はそう言って、静かにほほ笑んだ。