0338
2006-04-13
よろづ相談
 相談すると悩みが消えると有名な老女の元に、
一人の女の子が訪れた。
 制服をきちんと着、おとなしくおちついた容貌のその子は、
学校で自分の身に起きていることを話し、
こみあげる感情を押さえきれずに涙した。
 老女はやわらかくうなづきながら話を促し、
そして少女が話し終えると、言った。

「あなたは、何をしに来たの?」
 少女はとまどう様子を見せ、それでも口にする。
「このままなのは嫌なんです。
もしわたしが変わって何かが変わるなら、
わたしはその方法を知りたいんです」
 老女は悲しげな瞳で首を振ると、言った。
「ねえ、バカは死ななきゃ治らないって言葉、知ってる?」
「わたし……やっぱり、死ぬべきなんですか」
「とんでもない」
 彼女は言い、
「あなたは何も変わる必要なんてない。
真に変わるべき、そして真に病んでいるのは、
周りにさんざん毒をまきちらしながら自分は一切気にしない、
彼らなのだから」
 そして目を見て、言った。
「これから一週間。それを過ぎてもなにもかわらないなら、
またいらっしゃい」
 少女は期待が裏切られたことにうなだれながら帰途に着いた。

 だがそれから一週間後、またやってきた少女の顔は
晴れやかだった。
「どうだったの?」
 老女が訊ねると、
「あの人たちがいなくなったんです。
教室の雰囲気もよくなりました」
 少女は本来のものであろう笑みをあふれさせながら答える。
「そう、よかった。
周りが変わるだけで悩みがなくなることってあるものね」
 老女はそう言って、静かにほほ笑んだ。