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2006-04-14
いさめる人
 横でぺちゃくちゃくだらないことをしゃべっている
女性陣の会話を仕事しながら流していると、
「もうやめてください」
 隣の同い年くらいの人が想像もしなかった言葉を口にした。
「何かにつけて結婚しろ、こどもを生め。
それがセクハラだってわからないんですか? 
あなたたちだって自分が嫌うセクハラのおじさんたちと
なにも変わりませんよ、この変態! 
こどもを生むことの、なにがそんなに偉いんですか」
 横で見ててもいつもつらそうな顔をしていたし、
とうとう我慢の限界に来たんだろう。……が。
「そんな言い方はだめですよ」
 不愉快そうなおばさんたちの視線と、
彼女の悲しそうな目が集まる。
「今まで社会にも会社にもろくなことをしていないあの人たちが
唯一誇れることといえば、結婚してこどもを生んで、
社会が病的に騒ぎ立てる少子化を食い止める
一助になったということだけなんです。
でも生んだところでただ所帯じみていつもお金に困り、
すれてせちがらくなる毎日。
そこであなたのように若さと自由を持っている人を見ると
結婚してだんなとの生活の中で惨めになっていく自分を
かえりみてしまい、悲惨な生活を同じように
あじあわせたいと思うような、
ねじまがった根性でひがみを
他人にぶつけるしか晴らしようがない、
憐れな人たちなんですから、
とことん嫌ですが多少なまあたたかい目で見守るふりでも
してあげましょう」