0349
2006-04-16
1+1のなにか
「やったぞ、ぼうず!」
 街外れのぼろ小屋に入ると、自称科学者のおっさんが
年甲斐もなくはしゃいだ。
「はいはい、今度はなに作ったって?」
 あきれながらたずねると、
「作ってる最中にうたたねしたと思ったら、
起きたときになぜか完成していたんだ。
……この、『何でも合成マシン』がな!」
「うわ、なにその名前」
 そんなおれの言葉を気にすることなく怪しく笑うと、
そこらに置いてあったかごの中からカニとパンを手にして言った。

「さあ、とくと見ろ! このカニをこっちの容器に、
そしてこのパンをこっちに入れて、スイッチオン!」
 真ん中のいやにアナログっぽいメーターのはりが動き始め、
機械自体ががたがたとゆれながら煙を出す。
すぐにでも壊れそうなのにそれがまともに動いているっぽいのは、
奇跡だからだろうか。
 そのうち、チンとどこかできいた安っぽい音がして、
下のほうから出てきたものは……
「どうだ、カニとパンがカニパンになったぞ!」
 おっさんはそれを手にしてむしゃむしゃと食った。
「すげえ! ……のか? せっかく成功っぽいんだから、
もっとまともなことに使えよ」

「ああ、考えてる。例えばこんなのはどうだ? 
工事が決まっちまったおまえさんたちの
あの空き地に貝塚でも作れば、工事は中止になるし、
発見したオレたちの名前はテレビや新聞で全国に報道されるぞ」
 なにぃ! まさかおれが新聞に載るときが
こんなに早く来るとは。
「いいぞ、おっさん! なら、おっさんは貝を頼む。おれは……」
 ふと、気ずく。
「どうした、ぼうず?」
「なあ、かいずかの、『ずか』って何だ?」