ローマ字の勉強で生徒たちにいくつかの文を書かせたところ、
一人の女の子が書いたものに思わず笑った。
Watashi ha ojisan ni itumo koi wo saseraremasu.
わたしはおじさんに、いつも恋をさせられます。
『させられる』じゃなくて『してしまいます』でしょ?
でも、恋をさせられるというのも、言い得て妙かもしれない。
こんな小さな女の子に恋させるなんて、
よっぽどすてきなおじさんなんだろうな。
……そんな場面が一瞬にして目の前によみがえった。
その文を書いた女の子が自殺をし、
原因はどうやら親戚からの性行為にあったと聞いたときだ。
もしわたしがもっと察しのいい人間だったら。
もしこの国が属国根性に犯されず、koiとkouiを
書き分けるくらい、自国語とその発音を誇れていたなら。
あの子は、今もまだ生きていたのかも知れない。
そんな風にとりかえしのつかないことを思い、
わたしはgokaiなgokaiをした自分を激しくさいなんだ。