卒業して十年、くらいだろうか。
はじめての中学校の同窓会があった。
「よう」
「いよう」
まずは集合場所の学校の校庭でかつての悪友たちと軽く挨拶。
固まってあたりをみまわしてみた。
あたりにいるのといえば、
なんだかどこかくたびれたような男連中と、
茶色や金色に抜いた髪を肩辺りでばさばさに切った、
おそろいの女連中。あんな風になったら、
いったいだれがだれなのかすら見分けがつかない。
何をどうしたら、みんなこんなになってしまうんだろう。
……と、
「ひさしぶり」
後ろから小さく声をかけられた。
「ああ、うわ、ひさしぶり」
振り向くと、そこには昔の面影を残す顔があった。
はにかむ笑顔、長い黒髪、質素な服装。
「むかしから髪そんなだっけ?」
意外そうな顔。
「ううん、すこし前から伸ばしてる」
「へええ、ずいぶんきれいになったな」
「えっ?」
「だってさ」
おれはちょっと顔を寄せて、声をひそめる。
「ほかの奴らなんてみんなあんなかっこだし、
化粧もけばいしさ、だれがだれかだってわからないのに。
それに比べたって、なんだかすごく、きれいだ」
「ええ? あはは……」
困ったように小さく笑った。
そこへ、
「そろそろ飲み屋に動くってよ」
後ろから声がかかり、おれはいったん悪友たちのところへ戻る。
「なーんかさぁ」
歩きながら友人の一人が言った。
「今を見てみたい女は来てないし、
来てるのはたいしたことないのばっかりだな」
「そうでもないよ」
おれは言う。
「まさかあんなになってるなんてなあ」
おれの方を見る悪友たち。
「もしかして、さっき話してたあいつか?」
「ああ。ずいぶんきれいになってたよな」
思い出しながらうなづくと、
「あんな地味なのが?」
二人から同時に言われた。