0354
2006-04-17
ボクの世界
 卒業して十年、くらいだろうか。
はじめての中学校の同窓会があった。
「よう」
「いよう」
 まずは集合場所の学校の校庭でかつての悪友たちと軽く挨拶。
固まってあたりをみまわしてみた。
 あたりにいるのといえば、
なんだかどこかくたびれたような男連中と、
茶色や金色に抜いた髪を肩辺りでばさばさに切った、
おそろいの女連中。あんな風になったら、
いったいだれがだれなのかすら見分けがつかない。
何をどうしたら、みんなこんなになってしまうんだろう。

 ……と、
「ひさしぶり」
 後ろから小さく声をかけられた。
「ああ、うわ、ひさしぶり」
 振り向くと、そこには昔の面影を残す顔があった。
 はにかむ笑顔、長い黒髪、質素な服装。
「むかしから髪そんなだっけ?」
 意外そうな顔。
「ううん、すこし前から伸ばしてる」
「へええ、ずいぶんきれいになったな」
「えっ?」
「だってさ」
 おれはちょっと顔を寄せて、声をひそめる。
「ほかの奴らなんてみんなあんなかっこだし、
化粧もけばいしさ、だれがだれかだってわからないのに。
それに比べたって、なんだかすごく、きれいだ」
「ええ? あはは……」
 困ったように小さく笑った。
 そこへ、
「そろそろ飲み屋に動くってよ」
 後ろから声がかかり、おれはいったん悪友たちのところへ戻る。

「なーんかさぁ」
 歩きながら友人の一人が言った。
「今を見てみたい女は来てないし、
来てるのはたいしたことないのばっかりだな」
「そうでもないよ」
 おれは言う。
「まさかあんなになってるなんてなあ」
 おれの方を見る悪友たち。
「もしかして、さっき話してたあいつか?」
「ああ。ずいぶんきれいになってたよな」
 思い出しながらうなづくと、
「あんな地味なのが?」
 二人から同時に言われた。