友達と忘年会で食事しに行くと、牡蠣が出てきた。
「わあ〜」
と、嬉しそうな声を上げる友達たち。
「わたしいらないから好きにしていいよ」
わたしが言うと、
「ええ〜、栄養指導なんかするくせに、好き嫌いしていいの?」
からかうように訊かれた。
「今のところ、牡蠣だけはわたしが唯一嫌いな食べ物なのよ。
実物見るのはもちろん、においをかいでも写真を見ても、
なんだか気持ち悪くなるから、
たぶんわたしの体に合わないんだと思う」
「他の人がそう言ってたらどうするの?」
「そんなの、食べても食べなくてもいいものは
好きにすればいいって言う。
実際わたしは牡蠣なんか食べなくても健康でいるし、
もし亜鉛がたりないとしたら、自分がおいしく食べられる
レバニラ炒めでも食べるよ」
「そんなんでいいの?」
がっかりした顔の友達に、
「世の中に魔法の杖なんてないよ。
じゃあ、世の中には『これを食べれば健康!』なんて謳う、
うさんくさいのもたくさんあるけど。
栄養士も認める健康食品ってなんだと思う?」
「え、なに、なに?」
取って返したような興味のある目。
「それぞれ違う栄養素を含んだたくさんの種類の食品。
それを偏らずに毎日少量でも
バランスよくとっていくことに勝るものなんて、
今のところどこにもないのよ」
並ぶ呆れ顔を前に、わたしは手元のお酒をちびりとすすった。