0401
2006-04-28
電池切れ
 今日は娘の誕生日。
こっそりと街に出て前から欲しがっていたハムスターを買い、
止まっていた腕時計の電池も入れ替えた。
 娘はハムスターに大喜びをし、
その日からかいがいしく世話を始めた。

 それから一年半を過ぎたころ、
腕時計はだんだん遅れるようになり、
気づいたら針が止まっていた。
 ちょうどそのころ、ハムスターの動きが鈍くなり……
ある日、眠ったように動かなくなっていた。
「ハムスター、電池切れちゃったの?」
 動かないハムスターを手に乗せて、さびしい目で娘が訊く。
 わたしは娘からハムスターを受け取ると、
頭をさすり、おなかをさすり、おしりの毛を分けてみて
電池の蓋がないことを確認して、答えた。
「ちがうよ。生き物は電池で動いてるんじゃないんだ。
命がなくなった生き物は、悲しいけど、
もう動き出すことはないんだよ」