首が痛くなるほど見上げて、
ようやく空が見えるような建物の下、
とある父親がこどもに向かって口を開いた。
「ほら見てごらん。こんな大きなものも、根っこが支えてる。
上がゆがまずにしっかり立つには、
基礎がちゃんとしてなきゃだめなんだよ」
神妙な顔をするこどもに、父親は付け加えた。
「でもこんな立派に見えたって、
基礎の基礎はぐだぐだなんだけどな」
「失敬な!」
後ろからの声。
「手抜き工事がないように監督もしたし、
審査もちゃんと通っています。
基礎に問題があるなんてどうして言えるんです」
憤るその建物の関係者に、父親は言った。
「だれがこの建物を作ったと思う?
建築家でもなければ設計士でもない。
足元を見られて保険もなしに働かされてるおれたちなんだよ」