0412
2006-05-08
どうせ信じない
 わたしの部屋で友達とテレビを見ながらの夕食。
見るのはちょうど特番でやっている超能力番組。
 ばかばかしいと言われても、なぜだかついつい見てしまう。
『なんと、この子たち、透視能力があるそうです』
 特殊能力学校の中、テレビの女性がわざとらしく言った。
 横にいる通訳が何か言い、
その人が書いたものを透視する流れになると、
『では、裏が透けない紙に書いたものを、
この子に見えないようにして封筒に入れました』
 大きめの封筒をひらひらと振り、
『じゃあ、これがどう見えるのか、透視してもらいましょう』
 透視の成績が一番いいというこどもの前に封筒が差し出され、
透視が始まる。

 そこでCM。いらいらと終わるのを待っていると、
こどもが図形を書き上げた。
『こんな、感じ』
 紙に書いたのは三日月。
「あ、ばか」
 友達がつぶやく。
『うわ〜、おしいですよ。わたしが書いたのは、
太陽のつもりだったんですけど』
 女性は封筒を開け、中から二つ折りの紙を取り出して、
開いて見せた。
 書いてあったのは、三日月ではない、丸。
『あ、でも、だいたい似てますよ。
ここらへんの長いところなんてかなり近いですよね?』
「ほんとだ……」
 欠けさえなければ丸になったのに。
 もしかしたら、全体的な雰囲気みたいなものは
ほんとに見えていたのかもしれない。

「ばっかばかしい」
 友達がにくにくしげにつぶやいた。
「え?」
 振り向くと立ち上がり、
そこらへんにあった紙に何かを書いてわたしの前に置き、
「ねえ、この線、何センチくらいあると思う?」
 紙に書いてあるのは、ただの線。
「うーん、5センチ……くらい?」
 わたしが答えると、
「あ〜、残念。倍以上長そうですねえ」
 紙をもちあげ、裏に折りたたんである部分を開いた。
「あ、でも、はじっこの部分なんてかなり近いですよね?」
 だれかの真似をするように、いやらしい口ぶり。
「ずるいよ、裏があるならそういってよ」
 わたしが言うと、
「だってあの女、『なにを書いたか』じゃなくて
『これがどう見えるのか』って訊いたじゃない」
「え?」
 わたしは思わず紙に円を書き、二つに折って明かりに透かした。