幼い頃から親を超えろ、親の跡を継げと言われて育った。
そこで目指すようになった医科大学。
その過去問題集を見て言葉を失った。
「ねえ、父さん、これ、教えて欲しいんだけど……」
あまりのわからなさで父に訊ねると、問題を見た父は笑って、
「なんだ、今から医師国家試験の問題なんて早すぎだろう」
「表紙見て、表紙」
ぼくの言葉に本を閉じ、父は表紙を見て言う。
「まさか、大学入試の過去問なのか、これ?」
「……大学って、こういうのを教わるんだと思ってたけど。
入る前に知ってなきゃいけなかったら、大学でなにを学ぶわけ?」
父と二人で顔をみあわせ、ため息。
「授業に関係あるテキストかなんかを
願書出したときに交換で受け取って、
入試までに勉強して覚えてくださいとかなんとかで、
それをテストにすればいいのに」
ぼくが言うと、
「丸暗記だけを強いた科挙だって、
結局はいかにずるして通過するか、のテストになったしな」
そして父は同情と憐れみを込めた目で言った。
「まあ、昔からテストは手段じゃなくて、
テストに受かること自体が目的だってことさ」