0454
2006-05-23
見地
 庭に出て洗濯物を干していたら、家の中から娘の声。
「ねー、おかあさん。洗濯機むだに水ながれてるよー」
 いっけない。水ためようとしたまま忘れてたんだ。
「止めておいて〜!」
 中に叫んで、手にした洗濯物だけひっかけようとしていると、
「どっちにまわすの?」
 娘の声。
「右……? うーん、左、ひだり!」
 急いでハンガーをかけて洗濯機に走ると
水の音は止まっていないまま、蛇口の前で娘が固まっていた。
「なに、どうしたの」
 蛇口を激しく回しながら訊ねると、
「だって……」
 わたしの手元を見つめながら、言った。
「ここ、こうやって回すと、左に動くよね?」
 上のほうをさして指を左に回し、わたしの顔を見る。
 うなづくと、
「でも、これ。下のほうまで来ると……右になっちゃうんだよ」