庭に出て洗濯物を干していたら、家の中から娘の声。
「ねー、おかあさん。洗濯機むだに水ながれてるよー」
いっけない。水ためようとしたまま忘れてたんだ。
「止めておいて〜!」
中に叫んで、手にした洗濯物だけひっかけようとしていると、
「どっちにまわすの?」
娘の声。
「右……? うーん、左、ひだり!」
急いでハンガーをかけて洗濯機に走ると
水の音は止まっていないまま、蛇口の前で娘が固まっていた。
「なに、どうしたの」
蛇口を激しく回しながら訊ねると、
「だって……」
わたしの手元を見つめながら、言った。
「ここ、こうやって回すと、左に動くよね?」
上のほうをさして指を左に回し、わたしの顔を見る。
うなづくと、
「でも、これ。下のほうまで来ると……右になっちゃうんだよ」