0453
2006-05-23
ゲシュタルト四姉妹
 わたしが住み込みで家庭教師をしているお金持ちのおうち。
 名前を使って文字を教えていると、
末のお嬢さんは深いため息をつきました。
「どうしたんですか?」
 うつむく顔に訊ねると、
「わたしの名前だけおねーちゃんたちと違う……」
 こちらの胸が痛くなるようにつぶやきます。
「どうして? 他のお嬢さんたちも季節と同じでしょう?」
 わたしが言うと紙に鉛筆で、
「だって……『はる』でしょ? 『なつ』でしょ? 
『あき』でしょ?」
 それから、まだ教えてもいない文字。
「わたしだけ、『冬』」