はじめはひとめを忍ぶようにやっていた。
だれもいない場所、だれにも見られない行為。
ただそのことだけ、行為だけで楽しかった。
それがどれくらいたった頃か、行為は加速した。
自分だけのひめやかなものじゃない。
ばれればつかまるようなことだ。
最初はそれでもたまらなく興奮した。
だが、繰り返すうちにマンネリ感と物足りなさを
感じるようになった。本当に誰かに見られたいわけじゃない。
でも、誰かに見られる、つかまるようなギリギリが
ようやくおれを満たしてくれたんだ。
あるときは後部座席に『それ』を置いたまま
車を走らせたこともある。だれかに気づかれれば身の破滅。
だが、それがたまらなかった。
そのうち、家に『それ』を置いてでかけるようにもなった。
ずいぶん慣れてしまっていたし、そこまでしなければ
もう緊張も興奮も味わえなくなっていたんだ。
だが、それだけに何にも変えがたい興奮があった。
きっとわからないだろう。ばれてしまったときに
今まで気づいた社会的なものをすべて失う甘い破滅の予感。
それがあるからこそ、こんなおかしな行為が
なによりも輝くんだよ。
結局はつかまったわけだが……。きっと、
足を洗うことなんてできない。
いくらやめようと思っても、おれはまた、やっちまうはずだ。
「う〜んん……」
ちらばった二人分のメモをかき集めて、
わたしはため息をついた。
ようやく取材できた連続殺人・切断死体遺棄事件の犯人と、
近所で名高い露出狂の人。
『それ』が服なのか遺体なのか。
何度読んでも文脈からは判断できずに、
なんだかもう、泣きたくなった。