0465
2006-05-25
肉体契約
 仕事がのびた日の夜、同僚に誘われて帰りに食事。
 行きたくもない飲み屋で、飲みたくも無いお酒を
飲まされていたら、
「わたし、なんでこう男運ないんだろ」
 彼女がため息混じりにつぶやいた。
「また別れたの?」
 ぴくっと動く眉。
「いいよねえ、そっちはお幸せそうで」
 いやみっぽい口ぶりに、わたしはすこし、むっとする。
「いいでしょ? わたしは努力してるもん」
「わたしだってしてるよ」
 恨みがましい目と呪うような言葉。
 ……なんで仕事終わってまで
こんなくだらない場所にいなくちゃだめなんだろう。
「そうだね。いいだけ着飾って、髪も整えて。
ブランド物のバッグに高い化粧品。
『そんなわたしの体を差し出すから、
使いたい間はあなたはわたしに愛してると言いなさい』。
すごい努力だ」
 お酒のせいか、とまらないわたしの口は
うっかり毒を吐き出した。
「それって愛より、契約だよね」