「おう、ここだここだ」
地下へ続く階段の前で先輩が振り返って言った。
「いや〜、ここがまたいい店なんだ」
何度も聞いた言葉とともにその階段を下りていく。
その先には重厚なドア。
だれかの紹介なしには入れないというそれを押し開くと、
「いらっしゃいませ」
落ち着いた女性の声がした。
「申しわけありませんが、お客様……」
入り口付近にいた年増の美人が言いかけると、
「ああ、だいじょうぶだいじょうぶ。こいつ、おれの連れなんだ。
おれの紹介ってことで、いいだろう?」
先輩はいかにも慣れたように応えた。
すると、
「いえ、先日のこともありますので、
お客様のご入店はご遠慮願います」