0492
2006-06-01
好きなら
 なにがどう伝わったのか、
おれと友人は就職に関してのもろもろを語ってくれと
出身校に呼ばれることになった。
 仕事するってこんなのですよ、
就職まではこんなでしたよ、仕事の中身はこんなのですよと
それなりにお茶を濁して話し。
つつがなく終わったので帰ろうとしていると、
後ろから声をかけられた。
「先輩!」
 先輩って……友人か。
「先輩の会社に入ろうとしたら、
どんなことができればいいんですか?」
「え? うち? ……どうして入りたいの?」
 訊ねると、その子は。
「わたし、あそこの会社の製品、好きなんです」
 輝く笑顔で言い、
「「好きな会社にだけは入るな」」
 おれと友人の声が重なった。