きっかけはなんだったろうか。
講義の合間に同じ授業の留学生と議論していたら、
そいつは最後に鼻で笑いながら口にした。
「まったく、つくづくこの国は理論的とは程遠い。
これが単語に数詞すらつけない国民性なのか」
むっとしておれは言い返す。
「ああ、それに関しては何も言い返せない。
住所の書き方を犯罪者逮捕に映して見れば、
うちの国は大きなところから絞り込んで
最後に犯人に辿りつくのに対し、
おまえの国はまず犯人を決め付けて、
それからそいつがどこの番地にいて、
どこの通りにいて、どこの市にいて州にいて、
どこの国にいるのか。しぼりこむどころか後付けで
どんどん広げていくんだもんな。
暗殺でも起こったときには犯人をでっちあげて
あとから容疑を押し付けていくような、
おまえの国の論理主義にはどこもかなわないよ」