修学旅行のバスの後ろのほう。
大半がもてない男子のバカ話がきこえてきた。
はじめはまったく興味の無い話だったけれど、
彼女にするなら譲れないものという話題が出て
わたしはこっそり耳を傾ける。
「おれはムネがでかいのがいいな」
まっさきに口を開いた男子。
ああ、いるいる。体だけ目当てみたいなの。
「おれはかわいい子がいい。きれいより、かわいいのがいいよな」
あ〜、とか声をもらしながら
周りがうなづいているみたいだった。
「おれは絶対ちっこい子だな」
なんだ、ロリコンか。……ちがう、背だ、背!
そんなやりとりが聞こえてくる。
「おれは、趣味とか好みとかが同じのがいいな」
ああ、それならわかる。
おなじものを一緒にやれたら楽しいもんね。
「おまえは?」
「ん〜。実感わかないし、よくわからないけど」
あ、この声……。
わたしは息を殺して続く言葉を待った。
「おれは、おれのことを好きなひとがいい」
「安い!」
瞬間に周りからあがるつっこみの声。
「な、なんだよ。どんなにかわいくたって趣味が同じだって、
こっちのこと好きでもなかったらなんにもならないだろ」
それはそうなんだけど。
わたしは心でつぶやいた。
みんなそれを前提にして、
その上で何が欲しいか言ってるんだよ、たぶん。
……そんなこと思いもしない彼が、
なんだかいっそういとしく思えた。