0560
2006-06-19
51%の総意
 星が、滅んだ。

 だがたった一艘の宇宙船だけは脱出に成功し、
どこか住める星を求めてあてもない旅をすることとなった。
 はじめは希望もあったが、時間が長くなるにつれて
人は望みを失って行き、このまま空気や食料が尽きて
死ぬのを待つなら自ら死のうと訴える派閥と、
最後まであきらめずに生き続けようと訴える
派閥に分かれていった。
 分裂と濃縮を繰り返した二派はそれぞれ代表を立て、
最終選挙に入る。
 ほぼ拮抗しているように見えたものの、
投票の結果は自殺派が51%、生存派が49%であった。
「結果は出た! さあ、皆で死のう!」
 自殺派の代表は叫んだ。
「やめろ! 半数は生きたいと願っているじゃないか」
 生存派の代表は叫んだ。
「いや。ここにいる皆の総意で死ぬことに決まったんだ」
「違う! 死ぬなら死にたい奴だけ死ね。
生きたい人間まで巻き込むな!」
「それはできない。選挙で決めたろう? それが、総意なんだ」
 代表は宇宙船にとりつけた爆弾の起爆スイッチを押し込み、
遠くに聞こえた爆発音が衝撃を伴ってどんどんと近づいてくる。
「ふざけるな! こんなものが選挙と呼べるか!」
 だがその言葉は爆風に紛れ、命と一緒に宇宙に消えた。