朝の職員会議で伝えられたことには、
同じ学年の、違うクラスの先生が入院したとのことだった。
ストレスだろうか、胃はぼろぼろ、癌化しはじめていたらしい。
……無理もない。
お上の思いつきだけでころころ変えられる学習指導要領、
それに合わせて作らなきゃいけない授業指導案。
お金がないのを理由にされて、専門以外の教科も担当させられ、
さらには朝早く、夜遅くまで部活の指導。
自分のこどもにしつけすらできない保護者からつつかれ、
生徒からは無駄に反発され、力ある先生たちからは押し込められ。
時間も心にも余裕も逃げ道もない中での激務。
それでも体を壊しそうなときに大事をとって休めば
自分だけ甘いとか自己管理ができてないとか言われる職場だ。
……その結果が、これ。
「ちょっとよろしいですか?」
手を上げるわたしに集まる先生方の視線。
「最近道徳でやっている内容なのですが、
生徒だけでなくわたしたちも考えてみるべきだと思うのです。
それぞれにとって、『命の次に大切なものはなんですか』?」
ひとりひとり顔を見回してから、言葉をつなぐ。
「そして、実際のふるまいとして、
『命よりも大切にしているもの』はなんですか?」
思い当たる先生たちの顔が曇り、
わたしはとめられないため息混じりに口にした。
「わたしたちがこんな状態なのに、
生徒に命の重みを教えられるものでしょうか?」