財政を圧迫する元となるとして、
ほとんどの公務が民間に払い下げられた。
それからしばらくたった警察署、中年の女性が訪ねて訊いた。
「うちの娘が殺された事件を風化させないでください。
どうか、早く犯人を捕まえて欲しいんです」
それに警官は一瞥をくれて応える。
「無理ですよ。どうせ犯人はもう捕まりませんし、
捕まえられるとしても何百人からの体制で臨んで
犯人が一人や二人じゃ元が取れません。
一人でも充分元が取れる駐車違反や信号無視を取り締まって
罰金を取るほうが重要です」
その母親は叫んだ。
「それでも警察ですか!
犯罪者をみすみす野放しにしているなんて!」
だが警官は、抑揚のない声で応えた。
「では、あなたがわれわれを支えるお金を払ってくれますか?」