今日も今日とてお客さんに笑顔と荷物を届けに車を走らせる。
別段かわりない一日になるはずだったのに、
気づくと後ろにずっとついてくる車がある。
まさか……車か荷物かを奪うつもりなのか?
そこで慌てて本部に連絡を取り、
応援のメンバーが合流したところで
その車を取り囲むようにして停車した。
「なあ、あんたらなんなんだ?」
一人が車に近寄り声をかけると、
ウィンドウが開いて中の二人のうち一人が応えた。
「なんだ、聴いてませんかね」
特に気が引けた様子もなく堂々と。
その様子を車から降りて、遠巻きに眺める仲間たち。
「関係者なのか?」
「関係者かと言われれば、そうかもしれませんが」
……まさか、このさえない男たちが
監査なんてことはないだろうな。
「うちの会社の人間なのか?」
「まさか。さすがにそれはありませんよ」
「じゃあなんなんだ。強盗でもないだろう?」
のらりくらりとやる気のない会話を聞いていると、
「終わりました」と、おれの後ろから
同じような格好をした男が現れて言う。
それを聴いて車の中の男がつぶやいた。
「よし、駐停車違反5台確認」