0610
2006-07-01
箸にも棒にも
 うちの職場は転職してくる人や、
おもしろい資格を持っている人が多いらしい。
 そんな話になって部署の人にそれぞれ話がまわって行くと、
この前入って来た人は先生の免許を持っているとのことだった。
「へええ、もったいない。なんでこんな(つまらない)会社に?」
 わたしが訊ねたら、
「中学高校の先生で思いつくものってどんなです?」
 逆にききかえされて、そこで周りと考える。
「国語、英語、数学、理科、社会が主要五教科で……」
「あと音楽に、美術?」
「教頭先生や校長は教科じゃないし、保健室の先生は先生?」
「じゃあ、体育もだ」
 こんなものかな?
 どうだろうとみんなで見ると、
「あとは専門技術のいる、技術もありますよね」
 ああ、そういえば。
 思い出してうなづいていたら誰かが訊ねた。
「もしかして、技術科なの?」
 するととてもいい笑顔で笑って、
「おしい! でもみなさんの答えは真実に限りなく近いですよ」
 ええ? じゃあ、なんだろう。
 見ると死んだ魚のような目で、
「特別教室が二つもあるわりには
誰も思い出さないくらいに陰が薄く、主要教科の人が兼任で
やればいいから専任はいらないと言われる――」
 ため息混じりにつぶやいた。
「家庭科、です」