「児童虐待が年々増え続けているとは嘆かわしい!」
と、相談所の所長が叫んだ。
「なぜ増え続けているのか考えた事があるのか。
もっと減らすようにしなければいかんだろう」
「でも、所長」
「だまれ! このままではわれわれの仕事の質すら
疑われてしまう。とにかく数字を出さなければ
だれも納得しないんだ」
そして次年度。
「すごいじゃないか!」
所長が歓喜の声を上げた。
「児童虐待は前年度からほぼ半減したぞ。どうやったんだ」
職員の一人は泣きそうな顔で首を振り、言った。
「簡単なことです。相談に来たうち半分は
取り合わずに無視しました」