0647
2006-07-12
不透明な楽しみ
 会社ではゴミの分別がとにかく大変だ。
 燃えるゴミ、燃やせるゴミ、可燃物、サーマルリサイクル……。
 可燃物と燃やせるゴミと何が違うのかとか、
サーマルリサイクルは燃えるゴミじゃだめなのかとか。
なにがどうなってそういう分別をしてるのかも
とにかく不透明だった。
しかし分けなければ建物の管理者か何かからお叱りが来るらしい。
 そこで、昼休み終わりのゴミ箱の前には、
手にしたゴミをどこに入れればいいかと、
投入口の前で並ぶ人の列ができていたほどだ。

 と、ある日。
 昼食のゴミを捨てようとすると、
ゴミ箱の前の人だかりがいつもとは違う雰囲気でざわめいていた。
「どうしたんです?」
 訊ねたら、
「ほら、あれ……」
 指が示すゴミ箱。
 今までは無骨な金属の箱だったものが、
中の見える透明な箱になっている。
「ああ、なんだかさっぱりしていて、いいですね」
 言いながらゴミをどこに入れようかと目で探っていると、
気付いた。


 入れ口はいくつもあるのに、中は一つだったということに。