0649
2006-07-12
力ある者
 街を歩いていたときのこと。
わたしの横を、巨人が歩いて行った。
 わたしなんかが近づけないほどの大男。
でもその大きさに似合わず、たびたび後ろを振り返っては、
後ろからついてくる何かに襲われると脅えていた。
「それ、あなたの影ですよ」
 わたしが言っても声は届かず。
 大きくなればその影も自然と濃く大きくなってしまうのだなと、
自分の影に脅える憐れな巨人に思った。