わたしのうらやむ女の子。
明るくて元気で、勉強も結構できて、運動はばっちり。
いつだって場の中心にいた。
わたしは、といえばその後ろ、陰の中に身を潜めるだけの存在。
でも人の縁とは不思議なもので、
わたしと彼女はなぜか友達だった。
そしてあるとき。
「ねえ、どうしよう、どうしよう」
めずらしく、慌てた声の電話。
「え、なに? どうしたの?」
わたしは思わず電話を耳に押し付けた。
「えと、ほら、あたしの席のそばに……いるじゃない。男子」
「え? 陸上部の?」
「ううん、反対」
「科学部の?」
「う、うん……」
揺らぐ声。
「どうしたの? 何かされたの?」
「ちっ、ちがうよ」
そのまま、何かもごもごと声がする。
「え? なに? 聞こえない」
すると、
「えと……だから……えっと……。
好き、になっちゃったかもしれない」
はいぃ?
すなおな声でこぼしかけた言葉をあやうくのみこんで。
「どうしよう〜」
はじめてかもしれないとまどいぶり。
なんでもできるのにそういうところには疎かったんだ。
電話の向こうでおろおろしている様子を思うと、
なんだかすこし、ほっとした。