0676
2006-07-19
色めがね
 少女が熱心に見入るテレビでは、
リスが秋の森の中を走り回る姿が映っていた。
「リスは冬に備え、どんぐりなどの木の実を小分けにして
色々な場所にしまいますが、
そのまま忘れてしまうこともあるのです」
 映像と共に流れる解説に少女は笑い、後ろのかごを覗き込んだ。
「あはは、案外おまぬけだねえ、あんたたち」
 中のリスたちは憤慨して叫ぶ。
「違う! 冬に蓄えが足りなくなったら困るだろ? 
だから力いっぱい集めるんだ。それを食べきらないまま
冬が明けるから食べないだけで……
決して忘れてるわけじゃない!」
 が。その言葉は人の耳には聞こえなかった。