「あの〜、四日くらい、会社お休みします。
有給で埋めていただけますか」
朝。空港から会社に電話を入れた。
「なに、どうかした?」
いつものように不愉快そうな口調。
だから電話をするのは嫌なんだ。
「昨日の夜、親戚に不幸がありまして。お葬式に行ってきます」
「それなら忌引使えばいいじゃない」
「それだけは、できません。ではお願いします」
相手に有無を言わさずそれだけ言って、切った。
……忌引きを使え? それがどういうことかわかってるの?
大切な人を亡くして悲しんでる人に、
よそから行くわたしが自分のお給料と有給を守るために、
死亡証明書をくれと。その人が確かに死んだんだと
悲しみに追い討ちをかけろと、そう言うんだ。
内部に毒を持っていてもそれが毒とも気付かないなんて。
「この……っ!」
膝を叩き、唇を噛み。
わたしはフグを思い出していた。