0733
2006-08-07
君を迎えに
 天才とそれ以外の者との差。
 ぶしつけな友人のように、
それはある日突然やってくるものらしい。
「わたしはあなたの絵、好き」
 古いアパート、絵の具のにおいのこもった部屋で彼女が言う。
「そうか?」
 おれは自分の絵を見る。
「どうやったらこういうのを描けるの?」
「んー」
 ある日、『これが描きたい!』と。そんな閃きが来て
どうしてそう描けるのかすらわからないものを描く天才。
 自分で描けそうなもの、描いたら周りも見てくれそうだと
いうものを毎日探し、これなら売れそうだと閃いたら描くおれ。
 ため息混じりにおれはこぼした。
「閃きを、むかえに行くんだ、自分で」