「ねえ、おっちゃん。これって撃って倒したらいいわけ?」
「ああ、そうだよ。それが射的ってもんさ」
小銭が置かれ、銃と弾を渡す。今日ばかりはと
浴衣を着込んだ少女が狙撃手のようにそれを構える。
「さあ、うまくいくかな」
商品に振り返り、少女の弾を待った。
遠くに響く祭囃子。楽しげな人の喧騒。
熱いほどの電球を浴びながら、ただひと時のやりとりをする。
そんな祭りの空気が大好きだ。
――ぽん。
背中にあたる小さな感触。
振り向けば少女がまっすぐな目でおれに狙いを定めていた。
――ぽん。
おれの胸にあたる、柔らかな弾。そしてそこだけを見つめる、
見たこともないような熱い瞳。
「おいおい、お嬢ちゃん、なんの冗談だい?」
――ぽん。
最後の弾が、胸に。その真剣なまなざしには、
ひとかけの冗談も見ることはできなかった。
「おっと」
足をもつれさせ、倒れる。
「ははは、おじさん、撃たれて倒れちゃったよ。
こりゃお嬢さんに心を奪われちゃったな。
……でも、こんなおじさんでいいのかい?」
すると少女は射抜くような鋭い目をおれに注ぎ、言った。
「外はいらない。妹のために心臓だけちょうだい」