0735
2006-08-07
ちいさな
 夏休み。自然公園で遊ぶこどもたちの
お目付け役のボランティアをやってみることにした。
 まあボランティアといえば聞こえはいいし、
お目付け役といえば偉そうだけど、中身のほとんどは
こどもと一緒に遊ぶだけ。
 けれどこれがとにかく体力勝負で、
2日目にはすでに昨日の疲れも抜け切らずに、
ぐんにゃりと開始を迎えた。
「おい、メガネ!」
 下からの声に目を向けると、いたずらっぽい笑みの女の子。
 ぞんざいな言葉の裏に、ちょっとからかってやろうとか
そんな意図が透けて見える。
 ……ふふふ、かわいいな。
「はーい、なに?」
 ぼくの言葉に小さなとまどい。でもそれを悟られないように、
「か、かたぐるま!」
 ぶっきらぼうに言ってみせる。そんな一つ一つが
全部ばればれなのもまたかわいい。
「なに、昨日の気に入った?」
 背中を向けてしゃがむと、肩に足を乗せてくる。
「すこしだけね」
 その足をしっかり押さえて立ち上がると、
「わ、ちょっと待って」
 舌足らずの声。軽い体。
「ははは、だめ〜」
 まずは軽く小走りに。
「こら、止まれ。怖いこわい」
「あはははは」
 そんなこんなで遊んでいると、
いつのまにそんな時間が過ぎたのか、
「メガネくーん、そろそろお昼にしよう」
 本物の監視員のおばちゃんだ。
「あ、はーい」
 応えるぼくの声を覆うように、女の子が不機嫌な声を出した。
「メガネじゃないよ。ちゃんと名前あるでしょ!」