ボールペンの調子がおかしくなったので、
製造会社の窓口に電話をかけた。
「はい、こちら一般ボールペン相談窓口です」
　向こうから聞こえてくるのはさわやかな応答。
「あのう、ボールペンなんですが、
最近、スイッチっていうんですか？　
あれを押しても戻らないことがよくあるんですけど……」
「あ、申しわけありません。こちら、機構の一切ない
ボールペンの専用窓口となっておりまして、
ご相談の件は、ノック式ボールペンの窓口を
ご用意しておりますので、そちらでお訊ねいただけますか？」
　そう言われては仕方ない。
　いったん電話を切り、言われた窓口にかけなおす。
「はい、こちらノック式ボールペン相談窓口です」
　聞こえてくる、嫌にさわやかな口調。
　思わず言葉が口から漏れた。
「……あなた、さっきの人でしょう？」