夏の暑い日。友達と待ち合わせて街へと向けて電車に乗り込む。
「なんかずいぶん暑そうだけど。電車寒い?」
はおったシャツの長袖を伸ばしているわたしに。
「んーん、暑いよ」
「じゃあ、なんで長袖?」
「ああいうの」
わたしは目でそこらにいるタンクトップ男を示し、
「腕を下ろしててもはみ出る腋毛。
そばにいるときにつり革につかまるとあれが目の前に花開くんだよ?
電車が揺れたらむわっとしてじめっとした、
くっさいのが顔に直接……!」
想像するだけで思わず身震い。
「もし腕で顔にあたるのを防いだって、
生腕だったら肌どうしがくっつくのに。
そうでなくたって混んでくれば汗まみれ、毛まみれの腕がぶつかるのに」
「じゃあ、下だけでも涼しくすればいいんじゃない?」
「下!?」
思わず周りを見回す目には、毛ずねをむき出しにした足が何本も。
「見てよ、あの生い茂ったすね毛を。
そばに立たれるだけでいつあれが
自分の足にあたるかと思って気が気じゃないよ」
考えていたら腕にぞわぞわと鳥肌が立ってきた。
「個人的に……どうしてあんな暗黒領域を
見せびらかす格好ができるかのほうが非常に疑問なんだけど」