0753
2006-08-11
伝言ゲーム
 世の中には不思議な連鎖がある。
 特に誰がどういうわけでもないのに、
ある製品の同じ場所だけがまったく関係ない場所で
壊れるということがしばしば続いたりする。
 そして、今の時期がまさにそれだった。
 これはもしかしてと彼が思ったときにはもう遅く、
あわてて使用部品の発注をかけたものの届くのは早くて一か月後。

「管理長! また修理入って来ましたけど、どうすれば? と
修理担当から電話です」
 受話器を押さえて受付が叫んだ。もはや部品も尽きたし、
部品のない修理担当など、殻のないカタツムリのようなものだ。
わかってはいるが……
「とりあえず訪問して、不調の原因がどこか確かめに来た、とか
なんとかうまくごまかすように言ってくれ」
 彼は応えた。
「申しわけありませんが、とりあえず訪問して
様子を見に行ってくれませんか?」
 電話を受けている男は、受話器の向こうの男に伝えた。
 電話での指示を受け取った修理担当は、
故障した製品のある客先に訪問し、言った。
「こんにちは〜。とりあえず様子見に来ました」