しゃきしゃき流れるおじいちゃんの時間。
ゆったり流れるおばあちゃんの時間。
「おお、いかん」
懐から時計を出したおじいちゃんが声を上げました。
「また止まっとる。……こいつも古いからな」
おばあちゃんは袖口から時計を出すとおじいちゃんに見せます。
「すまんな」
おばあちゃんの時計を見ながら、
自分の時計の頭を回すおじいちゃん。
おばあちゃんの時間と同じになる、おじいちゃんの時間。
いつかおじいちゃんが誰かに時計を見せたら
その人もおばあちゃんと同じ時間になって、
その人が時計を見せたら別の人もおばあちゃんと同じになって。
みんながおばあちゃんの時間ですごすようになるんだ……!
「見せて〜」
腕を伸ばすと、わたしの前に下りてくる時計。
耳を寄せると、とき、とき と、
おばあちゃんの時間を刻む優しい音が聞こえた。