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2006-08-19
人質
 おじいさんが手術を受け、遠く離れたわたしたちは
何か月かしてからようやくお見舞いに行った。
 そのあと近くに住む親戚たちと集まると、
元看護婦のおばさんがぷりぷりとしながらこぼす。
「わたしも知らないわけじゃないから、あの子に、
飲ませてる薬訊いたんだよ」
 あの子。おかあさんの妹さんも、おばさんから見たら
いつまでもこどもなのだろう。
「そしたら筋弛緩剤ずっと出てるんだ。
脳の手術したから痙攣あっても困るからって
出してるんだろうけど、だるくて食欲も落ちるしさ、
このままじゃもう寝っぱなしになるから、
薬を見直してもらったらってあの子に言ったら、
なんて言ったと思う?」
 そして悲しい顔をして、
「そんなこと言ったら病院から出されるかもしれないし、
なにも言えないって」