はるか昔にあった悲しい戦争の記憶。
今年も終戦の日、正午を待って黙祷の鐘が鳴った。
――黙祷。
いづれの魂も、穏やかにあるように……。わたしも祈る。
そのまま街角に立ち、友達を待っていると
すこしして憤りながらやってきた。
「どうしたの?」
「それがさ、ひどいんだよ」
ぷりぷりとした口ぶりで。
「車内放送でも黙祷を、って言ってるのに。
電車がきたらみんな一気に降りようとするし、
駆け込んでのろうとするし。目を閉じて黙って祈る人なんて、
数えるほどしかいなかったよ」
なんだかとても穏やかな気持ちになって、わたしは訊いた。
「なんでそれを知ってるの?」