0787
2006-08-22
こおり。融けて雫
 おじいちゃんが亡くなり、お式でもお骨を拾うときでも泣いた。
 でも、本当は何も感じていなかったのかもしれない。
 喪服で締め付けた体を緩ませ、一息ついたとき。
『いや、わざわざすまなかったな。ありがとな』
 すこし聞き取りにくい入れ歯の声が聞こえた気がして。
 たぶん、凍っていた心の端が小さく震えて溶け出して、
頬にぽろりと雫が落ちた。