0789
2006-08-23
ほろり
 なぜだか無性にそこが見たくなって、
ぼくはお気に入りの高台に登った。
 はるか海も運河も見渡せる場所。
柵に寄りかかりながら眺める先を歩いていく夫婦や恋人たち。
 こんなにたくさん人はいるのに。
「なんで……ぼくの隣には誰もいないんだろ」
 自分の言葉にほろりと泣いた。