せめて一日だけでも、あれだけ帰りたがっていた家で
すごしてもらおう。
そんな発案だったらしく、昨晩病院で亡くなった
おじいちゃんは家で横になっていた。
怖いほど静かな部屋でぎこちなくすごしていると
訪問者を告げる音。
見に行ったおかあさんと部屋に入ってきたのは
一人のおばあさんだった。
「急にごめんなさいね。でも今朝見つけたら、
もう驚いて驚いて……」
申しわけなさそうな言葉に、
「見つけた、ですか?」
「ええ、新聞で」
おかあさんの視線がわたしに。わたしの視線はおかあさんに。
外へ出たわたしは地方新聞を買い、目を通してみた。
すると訃報を知らせる沢山の名前の中には
たしかにおじいちゃんの名前。
……よくこんな中からおじいちゃんの名前を見つけたなあ。
むしろわたしが驚いた。