「ん?」
彼は各店舗から送られた、一日の売り上げを見て声を上げた。
大手チェーンのコーヒー屋、経営戦略部の彼は
商品の売れ傾向を見て仕入れやメニューの変更を
考えるのが仕事だ。
「どうした?」
訊ねる同僚に、
「あそこの駅前店、コーヒーと紅茶の数字が逆になってないか?」
「ああ、朝すぐにコーヒーマシンが壊れたんだよ。ほら、そこ」
「ん? ああ、ごめん」
指差したところには、特記としてその旨が書かれていた。
そして次の日。
「んん?」
彼は例のものを見て声を出した。
日付を見、特記を見、それが間違いなく
本日のものであると確かめると、彼はまわりに訊ねる。
「昨日の駅前店、コーヒーマシンはまだ壊れてるのか?」
すると、同僚は答えた。
「いや、今日は朝から正常稼動中だよ」