0809
2006-08-30
個人絶対尺度
「いつも迷うんだけどさ」
 初詣の行列にもまれながら友人が言った。
「お賽銭っていくら入れればいいんだろな」
「そりゃ、おまえ」
 おれは答える。
「自分が神様になった気で考えてみろよ。
金持ちがケツ拭いても困らないような札をへらへら笑いながら
投げ入れて願うのと、小さなこどもが小遣いの中から
ひねり出した硬貨を大切に入れて願うのと、
どっちが価値あるものだと思う?」
「それなら、こどもだなあ」
「だろ? おまえが願うのが自分にとってどれだけ重くて、
その重さは財布にとってどれだけの重さなのか。
よく考えてつりあうように入れればいい」
「そうか……」
 財布を開いて、札にしようか硬貨にしようかと
頭をひねる友人に付け加えた。
「まあ、いくら払ったって、絶対かなえちゃくれないけどな」