0814
2006-08-31
ホラー
 タイトルだけで録画したテレビの映画はホラーものだった。
 こういうジャンルはあんまり好きじゃないけれど、
せっかくなのでそのまま再生。
 ――どっくん。
 古い町に迷い込んだ主役たちに近づく、なにかの存在。
 ――どっくん、どっくん。
 逃げる人間を追う、生きてはいないもの。
 ――どっくん、どっくん、どっくん。
 逃げ込んだ家に近づく――
「おばちゃーん!」
 大声と共に、わたしの部屋の扉が開いた。
「うひゃぁああああ!」
 飛びのきながら目がとらえた姿は、甥っ子だった。

「なにやってるのー?」
 ずかずかと部屋にあがりこんではあたりを見回す。
 このこわっぱ! いいタイミングであらわれるじゃないの。
「あ、テレビー。一緒に見よ」
 いそいそとベッドに寄りかかって座る三歳児。
わたしはビデオを止めると、それをもちあげた。
「わー。あそぼー! おばちゃーん」
 楽しそうにばたばたと足を動かす生き物に、
「あそびませーん」
「えー、どうして」
「二十代のうら若き乙女をつかまえて
おばちゃんなんていう子とはあそべませーん」
 外へ出して兄夫婦のところへ置いてくる……はずだったけれど。
こどもだけ置いてどこかへ行ったらしいので
母に任せて部屋に戻った。
「はあ〜」
 やれやれ。今日も会社があるのに朝から騒いで起こされたし、
今も寝る前の一時間しかない貴重な時間を
つぶされてたまるもんですか。
 とりあえずドアがまた開かないように荷物を積み、
あらためて腰を落ち着けて、軽く巻き戻したビデオを再生。
 悪霊に追われて家に逃げ込む主人公たち。
あわてて扉を閉めそのままへたり込むと――
 ガチャリ。主人公の頭の上、
そしてわたしの部屋でドアノブが動く音。
「わぁああ!」
 がちゃがちゃと激しい音をたてて動くドアの取っ手。
「開けてー。開けてよー」
 こどもの声が廊下から響いてくる。
 我が甥っ子ながら、薄気味の悪さに
わたしはごくりとつばを飲み込んだ。