タイトルだけで録画したテレビの映画はホラーものだった。
こういうジャンルはあんまり好きじゃないけれど、
せっかくなのでそのまま再生。
――どっくん。
古い町に迷い込んだ主役たちに近づく、なにかの存在。
――どっくん、どっくん。
逃げる人間を追う、生きてはいないもの。
――どっくん、どっくん、どっくん。
逃げ込んだ家に近づく――
「おばちゃーん!」
大声と共に、わたしの部屋の扉が開いた。
「うひゃぁああああ!」
飛びのきながら目がとらえた姿は、甥っ子だった。
「なにやってるのー?」
ずかずかと部屋にあがりこんではあたりを見回す。
このこわっぱ! いいタイミングであらわれるじゃないの。
「あ、テレビー。一緒に見よ」
いそいそとベッドに寄りかかって座る三歳児。
わたしはビデオを止めると、それをもちあげた。
「わー。あそぼー! おばちゃーん」
楽しそうにばたばたと足を動かす生き物に、
「あそびませーん」
「えー、どうして」
「二十代のうら若き乙女をつかまえて
おばちゃんなんていう子とはあそべませーん」
外へ出して兄夫婦のところへ置いてくる……はずだったけれど。
こどもだけ置いてどこかへ行ったらしいので
母に任せて部屋に戻った。
「はあ〜」
やれやれ。今日も会社があるのに朝から騒いで起こされたし、
今も寝る前の一時間しかない貴重な時間を
つぶされてたまるもんですか。
とりあえずドアがまた開かないように荷物を積み、
あらためて腰を落ち着けて、軽く巻き戻したビデオを再生。
悪霊に追われて家に逃げ込む主人公たち。
あわてて扉を閉めそのままへたり込むと――
ガチャリ。主人公の頭の上、
そしてわたしの部屋でドアノブが動く音。
「わぁああ!」
がちゃがちゃと激しい音をたてて動くドアの取っ手。
「開けてー。開けてよー」
こどもの声が廊下から響いてくる。
我が甥っ子ながら、薄気味の悪さに
わたしはごくりとつばを飲み込んだ。