0813
2006-08-31
焼死もしくは調理
 昔から、田舎で学校の先生になるのが夢だった。
 実際になってみると思っていたのとは違う部分もあったけれど、
少ない生徒に広い敷地、きれいな景色だけで充分すぎるほど。
 そんなある日、教え子の家で火事騒ぎがあったというので
あわてて様子を見に行くと、燃えたというのは家畜小屋。
 すこしほっとしながら見る焼け焦げた建物の残骸からは
掘り出された動物の遺骸が運ばれてくる。
「あんなにこんがり焼けちゃって……」
 横のおばあさんのしみじみとした声に、
「ぶっ」
 わたしの鼻から噴き出すしぶき。
 運ばれていくのは豚だった。
 ――あれは焼死した豚の死体? それとも豚の丸焼き?
 顔は平静を装いながら、わたしは鼻水をじゅるりとぬぐった。