昔から、田舎で学校の先生になるのが夢だった。
実際になってみると思っていたのとは違う部分もあったけれど、
少ない生徒に広い敷地、きれいな景色だけで充分すぎるほど。
そんなある日、教え子の家で火事騒ぎがあったというので
あわてて様子を見に行くと、燃えたというのは家畜小屋。
すこしほっとしながら見る焼け焦げた建物の残骸からは
掘り出された動物の遺骸が運ばれてくる。
「あんなにこんがり焼けちゃって……」
横のおばあさんのしみじみとした声に、
「ぶっ」
わたしの鼻から噴き出すしぶき。
運ばれていくのは豚だった。
――あれは焼死した豚の死体? それとも豚の丸焼き?
顔は平静を装いながら、わたしは鼻水をじゅるりとぬぐった。