0824
2006-09-02
一歩
 今日はぐずついた天気だったけど、
いつものように彼と街に出てぶらぶらとお店を冷やかした後、
うちに来て一緒に食事。
 何を話したかなんてわからないくらいの話に笑い合って、
彼が時計を見ると楽しい時間は終わり。
「じゃあ、帰るよ」
 立ち上がる彼を見上げて、
「あ、うん……」
 急にぎこちなくなる空気。
 こどもじゃないんだし、もう少しくらい
ゆっくりしていけばいいのに。
 玄関に向かう彼、すぐ後ろにわたし。
 靴を履くと振り返り、
「じゃあ、また」
「うん……」
 扉を開けて彼が出て行く。
「うわ」
 ざらざらと音をたてて打ちつける雨、
家の中へ押し込んでくるような強い風。
「台風、来たんだね」
 わたしの言葉に振り返り、目と目があった。
 なにも言えずに、数秒。
「あ、じゃ……」
「ねえ」
 彼の声を覆うようにわたしは声を出す。
「おさまるまで」
 おさまらないかもしれないけど。
 ためらいそうになるこころを奮わせて続けた。
「――う、うちに、いれば?」