0825
2006-09-02
魔法の言葉
 今日も朝から大忙し。パパを会社に送り出しながらの一仕事。
 娘の着替えにおべんとう、朝のごはんに歯磨き。
幼稚園のバスに間に合わせるだけで手一杯。
 ……なのに。
「ほら、早く着替えて」
「ほら、早く食べて。幼稚園に遅れちゃう」
 なんど急かしても言うことをきかない娘。
「じゃ、もういらない」
 スプーンを置いてどこかに行こうとする。
「こら。まだ残ってるでしょ? 
忙しいんだからすなおに食べてよ」
 すると、
「忙しいからいらない」
 その物言いに かっとして。
「なにが忙しいの! ずっとだらだらしてたくせに」
 怒鳴るわたしに泣きそうな顔。
「ママ、まほうのことばって知ってる?」
「なんなの、ごまかさないで」
 それでもわたしの目を見ながら、
「じぶんのこともあいてのことも、
なにもかんがえたくないときに言ってごらんって、
まほうつかいのおねーちゃんが言ってた」
「なんなの?」
 こんな話してる間にも早く食べさせて
用意させなきゃいけないのに。
 早く続きを促すと、娘は言う。
「――『忙しい』って」