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2006-09-03
半分人間
 哲学、というのはなかなかに興味深い学問だ。
 知識人ぶりたい奴らが中身もないのに
小難しく語りたがるせいで食わず嫌いしている生徒も
少なくないが、そうじゃない。
 あるものがほんとうにあるものなのか、
別の角度から見れば別の見え方があるんじゃないか、
そういった目、考え方を与えてくれるもの。
それはすなわち人生や自分の人間性をも深めてくれえる
きっかけとなる、人間に根付いたものなのだ。

 ――といった講釈をたれて、
わたしは黒板を書きながら生徒たちに言った。
「たとえば、『2と2ぶんの1』という数字があるとしよう。
これは通常の感覚、分数をやめた数で表すと、
どうあらわせるだろう?」
 とはいえ、小学生でもないので応える者などいない。
そこで適当な一人を指しながら訊ねると、
「2.5、ですか?」
 多少不安げな声が帰ってくる。
「そうだ。みかんで言えば、2個と半分。
『2と2ぶんの1』といって、それは疑うもののない形だろう。
でも、『2と2ぶんの1』も常に2.5とは限らない。
後ろに『周』とでもつければ、2周と半分。
角度で言えば360+360+180で900度になるな。
 でも、同じ周でも、時計であらわすと、60+60+30で、
150分にしかならない。
『月分』とつければ、ボーナス計算か? 
まあこれはいくらになるかは内緒にしておくが……。
普段わたしたちは何かを見るとき、
無意識に自分の単位をあてはめてものごとを――」
「せんせー!」
 いいところで、生徒の声。
「うん? なんだ?」
「それ、合計特殊出生率で言うと、どうなります?」